paris and cinema

第8回パリ紀行(2006.5)
chapter 3 朝から妄想。

  パリのプチホテルでの朝食は、どこでも大体似たようなものだ。ビュッフェスタイルで、部屋の端っこに食事が並べられている。3種類くらいのパンとシリアル、飲み物はオレンジジュースと牛乳、コーヒー・紅茶、食後のヨーグルトとフルーツポンチ。焼いたベーコンやハムが出ていたりすると、これは割と気の利いたホテル。へたをすると、パンとコーヒーくらいだったりすることもある。朝食をあまり大事にしないフランスの国民性か、それでも平気で10ユーロくらい別途にとられたりするから、バカにできない。ただしパンの質は概していいと思う。地元のブーランジェリーから仕入れるのか、クロワッサンとパン・オ・ショコラともう一種くらいが置いてあって、かなり本格派の香ばしさだ。


  パリでの朝食は、我々の場合、ふだんの2倍以上は食べる。これはやはりパンの美味しさに理由がある。なにしろ根っからパン好きの妻と、それに13年連れ添ってパン好きになった私。食べ放題の美味しいパンが、自分で買わないのにすでにそこに並んでいるなんてことは、ほかにありえない宝の山なのである。当然、毎朝全種類食べるし、お出かけ前の完璧なお通じのために他の食材もまんべんなくお腹におさめる。


  観光シーズンでないせいか、朝食に集まる客層は多種多様だ。話を聞くともなしに聞いていると、言語もフランス語から英語、ドイツ語、なんとも言えない語までいろいろ。話の内容が理解できないだけに、「何をしている人だろう」「二人はどういう関係か」など妄想が広がる一方だ。その妄想によれば、客はイギリスのある大学の文学部から学会出席のためにやってきた女性教授とその一味。朝食の席から早くも女性の地位向上について議論を交わしている。韓国から来た父と息子は、この息子がパリのコンセルバトワール(音楽学校)を受験するので、初めて2人だけの旅行。口数が少ない。もうひと組はルーマニアのおやじ2人。パリで仕入れた薬を母国で高く売ろうとたくらんでいる。・・・妄想とはいえ、実に国際色豊かだ。