paris and cinema

第8回パリ紀行(2006.5)
chapter 1 パリのハイウェイに異常あり

  混雑したハイウェイでタクシーが止まる。すると何故かそこに駆け寄る3人組の男。突然タクシーのガラスを割って、あっという間に中にいた旅行者のバッグを盗んで立ち去っていく。・・・映画のなかの話ではない。昨年パリに行った友人の家族が遭遇した、実際の出来事だ。


  パリのシャルル・ド・ゴール空港から市内へ入るハイウェイは、たいてい混んでいる。しかも比較的治安の悪い北部の郊外を通るとあって、実はこんな事件は最近珍しくないらしい。複数のルートから同じような話を聞いてしまった臆病な我々は、今回ばかりはタクシーをやめて、エールフランスのシャトルバスで行くことにした。  バスならば窓は高くて襲いにくそうだし、襲われても大きな欧米人男がいっぱいいるから、みんなで助け合えば大丈夫そう。ちょうど泊まることになっていたホテルも、バスが発着する凱旋門広場から近くだし、値段も1人片道12ユーロとリーズナブルだ。タクシーの運転手と何を話そうか、などと余計な心配もしなくていい。


  ANAで到着した我々は、空港の出口を出てすぐのところにあるエールフランスバスの発着所へ、自分の身体と体積があまり変わらなそうなトランクをおろおろ引きずりながら出ていく。といっても、帰りに大量の布地を入れてこなくてはならないため、行きのトランクは2個のうち1個はほぼ空っぽ。軽いために、かえって不安定なトランクは右へ左へと揺れながらトロトロ進み、「ちっちゃな日本人が頑張ってヨーロッパまでやってきた」という哀れを誘う絵ができあがった。


  出てくるときの東京は、まだ早春の冷たい風が混じった感じだったが、こちらは空港に着いたとたんに、夏の薫りがするほどの温かさ。バスで隣に座ったスペイン人らしき女性はもう半袖だ。さすが肉食人種は代謝が違う。やはり、ハイウェイはうんざりするほど混んだが、さすがに強盗に襲われることはなかった。


  ホテルが発行するリーフレットには、その場所は凱旋門のある「エトワール」駅から4分と記されていた。凱旋門から放射状に伸びる道路のうちのひとつ、マルソー大通り沿いにある。しかし実際にはたっぷり10分はかかり、しかも地図とは逆の側にあった。なんとも不可解である。これもフランスならでは、というところだろうか。