paris and cinema

ベルギー&パリ紀行(2003.9)
chapter 4 ブリュッセルだって、蚤の市。

 パリではもう見られなくなったトラム(路面電車)も、ブリュッセルでは健在。中心部を走る唯一のトラムを南のほうへ行くと、ステンドグラスで有名なノートルダム・デュ・サブロン教会がある。中へ入ると色とりどりの細かなガラス装飾が壁面 を飾り、それを通った太陽の光が教会の床を彩り、大きな柱をも赤や黄色や紫の光で染める。とくに信仰をもたない我々が見てもあまりに幻想的。厚い信仰をもった人々にとっては、この美しさこそ神の存在の神秘そのものであるのは想像にかたくない。


プチ・サブロン広場

 さらに教会前の通りをはさんで向かいにはプチサブロン広場という庭園があるが、ここはまるで“想像上の楽園”を現実のものにして、ややコンパクトにしたかのような花と緑とブロンズ彫刻の美しい景観。その名の通りスケールはプチだが、ベンチというベンチのほとんどが恋人たちに占領され、街のなかでは異常なほどロマンチック密度が高い。それでは我々も、と空いたベンチに座ってみたものの、出てくる言葉はバカ話ばかり。下品な笑いで楽園を汚してはいけないと、先を急いでいるふりをして歩き出す。すると目的の蚤の市が教会の奥に広がっていた。


 その場所の名はグラン・サブロン広場。ここは割と上質の品物がそろっていて、ジャンルも絵から宝飾品、古地図、家具、本、チョコレートの金型、レースなど幅広い。広場に面したところには、東京・銀座への出店で有名になったショコラティエ・ピエールマルコリーニがあり、われわれは買い物を前に、すかさずボンボン・オ・ショコラ(さまざまなバリエーションの小さなチョコレート)を買い食いした。


 ここでアンティークのボタンやレースを手に入れると、次の目的地はブリュッセルのもうひとつの蚤の市会場であるジュ・ド・バル広場。途中ちょっと大きな商店街を通り抜けていくのだが、ちょうどブリュッセルは秋の音楽週間とやらで、ここでも突然鼓笛隊とすれ違ったりした。


ジュ・ド・バル広場の蚤の市

 バトンができなくても臆せず続ける子供達。何人ものバグパイパーが一斉放射のように威勢のいい音を奏でるグループと、老若男女を問わない。まるで縁日がたったようなにぎやかな道をずっと歩いていくと、グランサブロン広場よりさらに大きなその広場に出くわした。


 方形の広場はほとんどすべて蚤の市の出店に埋め尽くされ、その数は200くらいもあろうかと思われたが、ここはテントもスタンドもなくまさに青空市の様相。そのお金のかかって無さ加減に比例し、出品されているものもアンティークというよりは日本でいうフリーマーケットに近く、家のなかのがらくたをそのまま持ってきたような感じだ。ひたすらに数は多いので、じっくり見れば掘り出し物もあるのだろうが、とてもそのような元気も時間もない。かと言って気になる品物があって値段を聞くと、これが意外に高い。値段の付け方は一様に数字のきりが良く、いかにも観光客相手の言い値。それが証拠にその場を立ち去ろうとすると「じゃあ15ユーロ。いや12ユーロか?」とどんどん下がる。まあそれでも合わないので、結局何も買わずに広場をあとにした。