cafe time sucre

カフェ・タイム・シュクレは、シュクレの杉浦今日子が、日々の出来事や刺繍のこと、
フランスのこと、もの作りのことなどをつらつらと書き綴る日記です。
コーヒーやお茶を片手に、ひと休みという時間のお供にどうぞ。


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2008.10.23
草枕
 旅行に行くときに必ず『本』を持っていきます。とくにヨーロッパに行くときの必須アイテム。なんといっても12時間のフライトの間、食べる、読む、見る、惰眠をむさぼるの他に選択肢が無いわけですから、ここは本の数冊がなければとても耐えられません。でも、普段の生活の中で『本を読む』にはわざわざ時間を作らなければならないわけで、いやでも本を読むしかないという状況に置かれる飛行機の中は実はちょっと楽しみな時間。
 ところで、今夏目漱石の『草枕』を読んでいます。漱石の小説は若い頃(多分、高校生か大学生だったころ)結構読んだ記憶があるのですが、なんせもう○○年前なもので、恥ずかしながら詳細は全く憶えてません。印象としては、作品毎に『好き』と『嫌い』がはっきり分かれる作家だな・・ということくらい。たしか、『三四郎』『門』『それから』『こころ』あたりは結構好きな方だったような気がします。
 ではなぜ、今になって漱石かというと、先日東急文化村ザ・ミュージアムで開催されている『ミレイ展』に行って、『オフィーリア』を見てからなのです。もうすぐ終わってしまいますが、この展覧会の印象的なポスターを駅などでご覧になった方も多いはず。
 草花に囲まれたなか、白いドレスを着た美しい女性が水に浮いている。彼女はシェークスピアの作品、ハムレットの中の登場人物オフィーリア。悲劇のヒロインです。恋人ハムレットに父親を殺されて正気を失ってしまう。彼女の死の場面を描いたのがミレイの『オフィーリア』。死の場面が美しいのは、物語の中ならでは。自然の草花が彼女を取り囲みますが、それぞれの花言葉を考えると物語と物語を絵に描くということの裏にある緻密さを感じます。人は意識的に何かを作るとき、本当に細部にまで神経を行き渡らせるものです。だからひとの心を奪うほどに美しい。
 ・・・それはさておき、英国留学中の漱石もこの『オフィーリア』を見ました。そして、『草枕』を書いた。では、このオフィーリアを漱石はどう捉えたのだろうと思い、草枕を読み始めました。まだ途中ですが、漱石の文章の作り方や物語の運び方には、やはり否応なしに惹かれるものがあります。さすがお札になっただけのことはある。この文章を明治時代の人が書いていたのか・・と思うと、スゴイですね。久しぶりに夏目漱石を読んで、また彼の作品を読み返したくなってきました。○○年経った今、また違う印象を持ちそうです。今度の旅のお供には、漱石をなにか1冊入れようと思いました。

写真は、高尾山口にあるうかい鳥山のお庭。ライトアップされて美しい。
今回のコラムを書いてて、『そういえば夏目さんもお札の人だったのよねぇ』とふと思って調べたら、1984年から2004年発行のお札だったそうです。20年間も夏目さんだったんですね。なんとなくもっと短い感じがしてました。あと、文中ご紹介したザ・ミュージアムのミレイ展は今月26日までです。残りわずか・・・。
もうひとつ、そういえばの話。旅先に本を持っていくのはいいんですけど、よく忘れてきちゃうんですよね。。数年前、シャルルドゴール空港で置き去りにしてしまった『龍馬が行く』の第6巻は、あのあとどうなってしまったのでしょう?帰りの飛行機で読むものが無くて、かなり落ち込みました。
あと、旅の途中、ブルージュのホテルで、その時持って行っていた上・中・下巻の小説の中巻を置いてきてしまいました。これもかなりの悲劇でした。
忘れた本じゃないけど、遠藤周作さんの『マリーアントワネット』は、パリからの帰りの飛行機で読み終わりました。今帰ってるとこなのに、『コンシェルジュリーに行きたい!!!今すぐ行きたい!!!』とがむしゃらに思いました。もちろん、次行ったときに行きました。


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2008.10.10
感動ポイント
 最近小説を読んでいないな・・・とふと思い、先日小説を3冊まとめて買いました。ひとつめはよく雑誌のお薦め本などにも名前があがる女流作家の本。しかし、これはどうにも文体が好みに合わないみたいで読み始めてすぐに違和感を感じてしまい、数ページで挫折。わざとなのかもしれないけど、どうも読みにくい文体なんですよね。文章の流れが複雑というか・・。さくさく読めない感じ。これがどうしてお薦めなのか・・・私には理解不能でした。
 ふたつめは最近映画化された作品の原作本。なんと帯に『最後の数ページは涙なくして読めません』的な宣伝文句。これまたしかし・・・。いつ涙が出るのかと、次?この次?と思いながらページをめくっていましたが、涙が出る間もなく終了。ちょっと肩すかしを食らった気分。でも、ここまで『泣ける』と断言されてて、涙がにじみもしない私って・・・。
 3冊目はミステリー。この方の本は以前にも読んだことがあったんですが、なにしろ重い。そして表現がリアルすぎてグロテスクな部分があり、『ちょっと無理かも・・』と思うところは飛ばし飛ばしにして読破。なかなか考えさせられる物語でした。
 本を買うとき、とりあえず背表紙のあらすじを読みますが、なかなか『アタリ』の本には出会えませんね。なので、確実に気持ちよく本を読みたいときは、以前読んで良かった本を読みます。というわけで、3冊読んだ後、以前読んで良かった三浦綾子さんの『千利休とその妻たち』を再読しました。わたしは歴史小説が好きでよく読むのですが、三浦さんの歴史小説は女性の感覚で捉えられていて感情や風景の描写が繊細で、本当にその時代にいるような感覚を体感できるのがいいところです。
 もう随分前に読んだ本でしたが、やはり今回も良かった。でも、以前読んだ時と『感動ポイント』が違った気がします。以前はもっと『おりき(利休の2度目の妻)』よりに読んでいた。今回は、『利休』よりでした。利休の気持ちに添って読み進めていたようです。ここは『再読』のお楽しみのひとつですね。そのときの自分の環境や、気分などで感動ポイントが違ってくる。心に残る文章や、台詞が違ったり、以前は号泣したのに、次に読んだときは泣かなかったり。いい悪いではなく、新たな発見があって面白いです。

写真は、ある意味カンドーのインドのスナックのパッケージです。薄いぱりぱりのおせんべみたいなもの。この少女(?)の写真、すごいです。しかも白黒。となりのピンクのうさぎもきてます。インド人のセンスに脱帽。こういうのが結構好きです。


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