cafe time sucre

カフェ・タイム・シュクレは、シュクレの杉浦今日子が、日々の出来事や刺繍のこと、
フランスのこと、もの作りのことなどをつらつらと書き綴る日記です。
コーヒーやお茶を片手に、ひと休みという時間のお供にどうぞ。


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2008.8.28
ルネサンス
 『ルネサンス』という本を読んでいます。これは、河出書房新社からでている『世界の歴史』というシリーズものの第12巻。
 誰でも知ってる『ルネサンス』という言葉。『再生』という意味ですが、じゃあ一体なによ?と問われるとちゃんと説明することがそういえばできないな・・・と思い、読んでみることにしました。
 まず、プロローグで2枚の絵が出てきます。どちらも植物図鑑の絵・・・ということなのですが、この2枚が著しく違う。一枚は13世紀の植物図鑑からの絵で、なんとも奇妙な植物の絵。そこには図鑑とはとても思えない、変な生き物の上に草や樹が生えています。今の私たちから見たら、これは正直『漫画』か空想のイラストです。図鑑の絵ではない。もう一枚は14世紀の植物図鑑の絵。こちらはよくある、植物を写生したそのままの姿の絵です。
 著者は、この2枚の絵の間にルネサンスがあるといいます。つまり、13世紀までの人々(ここではヨーロッパの人々)は、この現実世界は妖怪や化け物や目に見えないものたちが世界を支配していると考えていた。つまり、その奇っ怪な図鑑の絵を描いた人は、大まじめにこの絵を現実のものとして描いていたわけです。『リアルにものを見る。あるがままの目に見える姿をそのまま写す。』というのではなく、目に見えないけれど世界を支配しているものに恐れを抱き、それをとても重要視していた時代が13世紀まで。人間の長い歴史の中で、ずっとずっとそういったものが恐れられていた時代が、一気に13世紀から14世の約100年間で変わってくる。人間はリアルを見るようになる。見たままのものを写し、絵を描くようになる。それがルネサンスの一端・・だと言うのです。意識の変革です。科学の無かった時代にこれはすごいことでした。
 私たちにはものをリアルに見るということは当然のことで、むしろリアルに見ないことをばかばかしいと感じてしまうかもしれないけれど、13世紀まで人間はリアルを信じることができていなかった。科学に裏付けされたものが無かった時代。人々は疫病を恐れて、飢饉を恐れて、事故を恐れて、その恐れは全て神の怒りや悪魔の仕業によるものだと信じていたのだと思います。だから植物の根にも何かがいるに違いないと思っていた。
 でも、そうじゃないと、植物の根は植物の根なんだと、リアルを見つめるようになった。それが14世紀。意識を変える・・とは、今まで常識と思っていたことが違うんだということになる。それって、すごいです。最初の序文に与えられた2枚の絵。ここの100年間に起こった意識の変革。
 なんだか、1900年代以降、今の時代ももルネサンスと同じくらいの変革が起こっているのではないかと思います。今までの人間の生活が一気に変わってきた。きっと何百年も後になったら、この時代に『ルネサンス』のような名前が付いて呼ばれるようになるような気がします。今って色んなことの変化がものすごいスピードで起こってて、誰にも止められないくらいの勢いで変化が続いている。スゴイ時代ですね。今までの歴史に無かったこと。でも、その時代に生きているとそれが一体どういう意味を持つものなのか分からないものです。生まれ変わりがあるなら、200年後に今の時代を振り返って、昔はこんなんだったんだ〜と、歴史の授業で1900年代を学んでみたいものです。

写真は、人気の無い夜の羽田空港。江戸時代からまだ150年しかたってないのに、150年前はみんなちょんまげ結ってたのに、もうこんな建物が建っちゃってるんですよ。すごいですねぇ。全然関係ないですが、空港という空間が結構好きです。

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2008.8.24
北京オリンピック
 今日でとうとう、最終日です。
 始まる前は個人的にはそんなに盛り上がってなかったのですが、始まってからやっぱり見てしまいましたねぇ。普段見ない競技も、オリンピックとなると見ちゃうんですよね。なぜか。
 普段あまりテレビ自体を見ないし、スポーツ中継はほとんど見ることがないんですけど、いつも気合いを入れて見ちゃうのが『マラソン』です。2時間ちょっとのドラマ。マラソンの正しい見方は、スタートから最後のゴールまで、きちんと全部見ること。結果だけ見るなんてのは、邪道です。2時間ちょっとのリアル・ドラマですから、その中には駆け引きや、揺さぶりや、体力・精神力の限界への挑戦といった色々な要素が含まれています。
 特に、女子マラソンの場合は増田明美さんの解説が付けば最高!!とても楽しめます。(増田さんは要所要所で、誰も知らないような選手の小ネタをご披露してくださるので、レース展開と一緒に楽しめます。今回の北京女子の解説は有森さんでしたが、増田さんはトラックの中距離の解説をされていました。5000mの時、外国の選手が途中でフィールドに倒れ込んでしまったときに、『彼女の趣味はサボテンを育てることなんですよ』という小ネタが出たときには、さすがとおもいました。)
 色々なメディアが、選手達の色々なことを報道する中、中国選手の金メダリスト達が空き時間に『刺繍』をしているという小ネタがありました。重量挙げや、飛び込みの選手達が、ちくちく空き時間に針と糸を持って刺繍を楽しんでいる姿を想像すると、なんとも微笑ましいです。彼女たちにとって、刺繍はリラックスするためのもの。少しずつ布の上に描かれていく糸の模様を楽しみながら、心を落ち着かせているのですね。激しい勝負の世界では、緊張感が頂点に達し、想像を絶するプレッシャーと戦っているに違いない彼女たち。そんな風に刺繍が心のコントローラーとなっていると思うと、針と糸という小さなものの持つ力が計り知れないものであると感じます。

写真は、クラスサンプル用の刺繍です。ちょっともこっとさせて立体感を出す刺繍、スタンプワーク。こちらはルームシューズに仕上げます。(今のところ、このカリキュラムの2回講座の予定はありません。)

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2008.8.8
小袖展
 今、サントリー美術館で開かれている『小袖展』に行ってきました!!着物好き、刺繍好きにはたまらない展覧会です。
 この展覧会、松坂屋京都染織参考館の所蔵品を展示したもの。素晴らしい意匠の小袖が、これでもかっ!!!という勢いで陳列されています。ほんとうに、たっぷり時間をとってじっくり見たい展覧会です。
 展示品は絹のもので、化学染料がなく自然のもので染めていた時代のものですから、かなり退色しているのだろうと思います。会場で私たちが目にするのは、落ち着いた色合いのシックな着物。でもきっと、染め上がったばかりの時の『朱色』は艶やかで、『黄色』ははっきりと鮮やかだったに違いありません。今は鈍い光となった金・銀糸も、留め付けられた時は輝きを放ち、見る人の目をはっとさせたことだと思います。
 200年から300年という時を超えて、少しずつ退色してきた絹の生地と絹の糸。当時の贅をこらしてデザインされ、染められ、繍われ、仕立て上げられたものは、たとえ退色してしまった今でも、十分ひとの心に訴えかけてくる力があります。これらの小袖を制作した人たちは、名もない職人たち。たとえ名前がなくても、こんな風に後世の人々の心を動かすもの作りをしていた・・・。ものを作る者としては、見習いたい姿勢です。
 ずっと続けて、少しずつ技術を上げて、いいものをつくり、次にはもっといいものをつくり、そしてその次にはさらに上を目指す。そんな風にストイックにもの作りをつづけられたらいいな・・・と思います。

ストイックと言えばかっこよく聞こえますが、要するにオタクです。もの作りはオタクじゃないとできないんじゃないかと思います。わたしもかなりオタク度高いです。でも、オタクって聞くとつい『宅八郎』を思い出しちゃうんですよねぇ・・・。いまだに『オタク=宅八郎』ってのもどうかと思いますが・・・。
写真は島根、松江城。江戸時代にはみなさんここで着物を着ていたと思うんですが、着物じゃ危ないでしょう・・というほど階段が急です。

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