cafe time sucre

カフェ・タイム・シュクレは、シュクレの杉浦今日子が、日々の出来事や刺繍のこと、
フランスのこと、もの作りのことなどをつらつらと書き綴る日記です。
コーヒーやお茶を片手に、ひと休みという時間のお供にどうぞ。


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2008.4.1
国立ゴブラン織製作所2
 今度こそ、ゴブラン織製作所。前回の続きです。
 『モビリエ・ナショナル』。日本語でいうと、フランス国有動産管理局。家具やテキスタイルのコレクションの管理、修復、そして新しいものの製作を行っています。ゴブラン織製作所もここの管轄。そうでなければ、とても運営不可能でしょう。一般のお客さんを相手にする商売としては、あまりにも17世紀的すぎる。
 恐らくネットで検索すればここの情報は簡単に見つかると思いますので、ここでは私が実際に行って、見てきたことや感じたことを書いてみたいと思います。まあ5年前の記憶なので、忘れてしまっていることも多々ありますが・・・。
 週3日行われているガイド付きの見学、もちろんガイドはフランス語です。でも、フランス語がわからないというと、英語の解説文をくれます。さすがに、日本語の解説文はありません。そこまで観光地化はしていない模様。かなりマニアックな見学地なので。
 中にはいると、暗い建物の中でしばらく待たされます。正直、意外にも多くの見学者がいてびっくりしました。国籍も様々なようでした。『手しごと』に興味のある人というのは、全世界にいるものなのですね。
 わたしたちのガイドをしてくれたのは、ひじょーによくしゃべる(というか、普通フランス人はよくしゃべる。本当に。多分、人を前にしてしゃべらないでいるとどうにかなってしまうのでしょう。どうなるかは知りませんが。)中年の小柄な女性。見学者のほとんどが英語の解説文を見ていたので、どうやらフランス語を解せる人間はあまりいないチームだったにもかかわらず、彼女の弾丸トークはものすごい勢いで、時にはギャグもまぜ、ちゃんと自分で笑ってから次に移ります。正直、最初はまずこの女性を見学してしまった。こんなに流暢にしゃべりまくって、誰も笑わなくても自分のギャグにちゃんとウケる強い心。ある意味羨ましいです。
 さて、本題の工房。中庭には創設者のコルベールさんの銅像が建っています。ルイ14世時代の宰相です。この時代の人らしく、ソバージュのような髪型。服装は映画『アマデウス』の中の男性のような感じ。やり手だったのでしょう。なにしろ、創設は1667年。340年後の今も続いているのですから。先見の明があったのですね。
 工房の中は意外に近代的な感じです。自然光で作業ができるように、窓が大きく取られています。大きな台が、いくつもいくつもあります。そこに白い縦糸が張られている。ここにひと糸ずつ、人の手で、横糸が絡まっていくわけです。製作方法がいくつかあるらしく、縦に張られた台の部屋と、横に張られた台の部屋がありました。若い職人さんが意外に多くてびっくり。ちゃんと製作者の育成も怠っていません。
 でも、一番びっくりしたのはその図柄。ゴブラン織りといえば、宗教や神話をモチーフとしたもののイメージでしたが、ここで制作されているのは、現代アーティストが下絵を作成したなんともコンプリケなもの。図案が近くにあって、それを確認しながら織っていくのですが、その図案が奇っ怪なモノが多くてびっくりでした。大きな面に小さな丸がぎっしりとか、宇宙みたいな模様とか。とにかく、今まで美術館やお城なんかに飾られているゴブラン織りの図柄とは全く違うのです。正直、オールドファッションのわたしには、ちょっと理解できない図案が多かったです。もし自分が製作者で、この小さな丸々の図案を作れって言われたら、ちょっと萎えるかな・・・。だって、一枚仕上げるのに3年とか、4年とかかかるわけですよ。それが、来る日も来る日も丸々です。絶対途中で嫌になりそう。あくまでも個人的な意見ですが。
 ここで作られたゴブラン織りのタピスリーは、世界中にあるフランスの大使館や大統領官邸などに飾られるそうです。技術を守ること、その技術を使える人を守ること。大切な独自の文化を繋げていくために国が力を注いでいる。フランスという自国意識の高いひとびとの誇りが見えたような気がしました。

写真は王様サボテン。(勝手に命名。)緑のサボテンの上に、オレンジがかったベージュのミニサボテンが乗っています。鉢も王様風。こういうのを見ると、シャッターを切らずにはおれません。

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