cafe time sucre

カフェ・タイム・シュクレは、シュクレの杉浦今日子が、日々の出来事や刺繍のこと、
フランスのこと、もの作りのことなどをつらつらと書き綴る日記です。
コーヒーやお茶を片手に、ひと休みという時間のお供にどうぞ。


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2007.12.27
『今年の一番〜アンティークのもの〜』
 今年も色んな出来事がありました。昨日久しぶりにテレビを見たら、『笑っていいとも』の特番をやっていて、『ああ・・・、年末なんだな』と改めて思いました。正直、テレビをあまり見ないので、世間的季節感があまりないんですよね。クリスマスもいつの間にか終わっちゃってたし。
 年末・・ということで、誰でもやるようにこの一年を振り返ってみると、なにやら色々ありました。色んな人やものに出会って、貴重な時間を過ごしました。
 素敵なアンティークのものにも色々出会いました。
 オランダのマーケットで見つけたシルクの刺繍生地。小さな断片ですが、『いい仕事してます』と言える手間のかかり方がうかがえます。
 丁寧な手しごとでかがられた麻のハンカチーフ。こちらは家族のマークがクロスステッチで施されています。
 いつもお世話になっているアンティークやさんで見つけたボビンレースの付け襟。白い麻の糸でしっかりと編まれている秀逸の作品。
 以前にもこのコラムの中で書いたと思うのですが、今アンティークのものが本当に手に入りにくくなってきていると感じます。それは新しく作られるものではないから仕方のないことなのだけれど、手芸に関して言えば、本当に昔の技術はすごいです。それは歴史の中で受け継がれてきたもの。今生きている私たちが繋げていかなくちゃいけないもの。ものを作ることで、そんな歴史の流れに入り込むことができたら、その甲斐があるってものです。

 写真はコラムの中で書いた、今年出会ったアンティークのものたち。もちろん、作った人は私のことを想定して作っているわけではなく、別の誰かのことを思い(もしかしたらただ仕事だったのかもしれないけど・・)作り上げたわけですが、丁寧にしっかり作られたものには時間を超えてなにか伝わってくるものがあります。言葉では上手く言えないんですが。気持ちをあったかくしてくれるものです。

 『シュクレ・プリュス』の作品にも、伝わる何かがあります。トピックスをアップしましたので、ぜひご覧ください。
下記のURLからどうぞ。
http://www.sucreweb.com/plus/index.html  
2007.12.18
『再会』
 多分、9年か10年くらい前になると思います。『知ってるつもり』という番組の中で、葛飾北斎の工房で描いたと言われる2枚の絵が映し出されました。確か、町屋の娘と武家の男の肖像画で、司会の関口宏さんが『オランダ人の依頼によって描かれた』と解説していました。私はテレビの画面を通して見たその絵に、とてつもないショックを受けました。『なんだこれは???』みたいな。とにかく、今まで見たことのない絵だったのです。
 西洋の油絵とも違う、いわゆる私の知っている版画の江戸の浮世絵でもない、一体この絵はなに???と・・・。水彩画みたいだけど、その透明感と質感と、どうしたらこんな絵が描けるんだろう。この絵を実際に見たい!!!と、その時ただただ夢中にそう思いました。
 その後、ずっとその絵がどこに所蔵されているのかを探したのですが、なかなか見つからず。やっと半年後くらいに、パリ国立図書館と、ライデンにあるオランダ民俗学博物館の所蔵品であることが判明したのです。
 テレビでちらりと見たあの日から、数々の名画はあれど、私の中ではダントツでトップの座に君臨している北斎工房作の一連の絵(パリ国立図書館に25枚、オランダ民俗学博物館には15枚、江戸の風俗を描いた一連の作品として所蔵されています。)が、なななな、なんと!!今、江戸東京博物館に一気に凱旋帰国してきているのです!!!北斎展は色々な美術館がこぞって開催する人気の企画展ですが、この一連のシリーズが一気にやってきているのは『お初』なのではないでしょうか。
 もちろん早速行きまして、再会してきました!!(パリ国立図書館所蔵のものは、以前実際に見たことがあったのです。)
 やはり、やはり。素晴らしいです。感動です。人情味に溢れた人物が、愛嬌のある動物が、風が、雨が、江戸時代の日本の風景が、北斎とその一門の筆で描き出されています。絵を描くことにとてつもない執着を見せた北斎が、あの鎖国の時代に西洋の技術を取り入れながら描いた、『江戸』。またしても北斎にコーフンさせられてしまいました。

 写真はオランダ、ライデンにある国立民族学博物館のメイン・エントランス。中は改装されたばかりで、とても綺麗で近代的チック。エントランスの階段の右側にあるのが、わずか2メートルばかりをあがるためのエレベーターなのですが、(写真では今まさに人が乗り込もうとしているところ)このエレベーターが恐ろしく遅い。超高速都市東京に住む我々には信じられないスピードで、ここにオランダの寛容さを見ました。
 さてさて、北斎工房作の一連の絵、パリ国立図書館所蔵のものには、信じられないことに絵に『ハンコ』が押されています。しかも、その押し方が結構大胆で、まん中らへんに『ぽんっ』と勢いよく押されていたりする。フランス人の大胆さに度肝を抜かれます。きっと、国立図書館に持ち込まれた当時は、その価値がよく分からなかったということなんでしょうね。
 ちなみに、北斎展は江戸東京博物館で1月27日まで開催中です。

まだ『シュクレ・プリュス』ご覧いただいていない方は、下記のURLをチェックしてみてください!! http://www.sucreweb.com/plus/index.html  
2007.12.11
『十皿の料理』
 以前、友人がどうしても行きたいフレンチレストランがあるのだけれど、一緒に行かないか・・と誘ってきました。彼女は、そのシェフが書いた本を読んで、どうしても、どうしても、その人が作った料理が食べたくなったのだというのです。もうひとりの友人がそのレストランに行ったことがあって、やはり彼女も素晴らしいというので、3人でランチの予約をしました。
 せっかく行くなら・・と思い、友人がどうしても行きたくなったきっかけの本を借りて読んでみました。その本が『調理場という戦場』。シェフがフランスに渡り、修行をした店での数々の経験が書かれたその本。そこにはすさまじいものがありました。本気で自分自身に取り組む、人間の姿。正直、その熱い情熱に圧倒され、人間はここまで本気になれるんだ・・・と、本物の持つ気迫を感じ、恐らくこの本を読んだ人全てが感じるように、わたしも『この人の料理が食べたい』と思ったのでした。
 その時、友人と行ったこのレストランが忘れられず、ずっとまた行きたいと思いながら数年が経ち、ようやく先月の誕生日に主人と行ってきました。ランチで行ったのですが、やっぱり満足できる料理でした。上手く説明できないんだけど、妥協がない・・というか。直球勝負なんだけど、何度も何度も何度も練習して、一番いい球をばしっと投げてこられた・・・みたいな感じです。ただ美味しいっていうのとは違う。どれを足してもどれを引いてもダメで、ココがサイコーっていう感じ。
 帰りに、シェフの本が置いてあったので、『十皿の料理』というのを買ったら、シェフがお名前と一言を書いてくれました。『習慣は第二の天性』。毎日毎日、素材のことを考え、最高のひと皿を創り出すために工夫を重ね、料理を作り続けてきた職人魂を携えたシェフの言葉。今の私の座右の銘にしたい、素敵な言葉をいただきました。ありがとうございました。

 写真は先日友人が作ってくれた誕生日ディナー(メインが写ってないけど)と、誕生日ケーキ。このケーキ、ミニシュー・タワーです。正直、かなり驚きの逸品でした。とにかくでかいっ!!!クッキーの『happy birthday』プレート付き。レストランの料理も好きだけど、友人達がいつも作ってくれる料理はもっと好き。ある意味、彼女たちにも妥協がなくて、すごいです。
 今日のコラムで書いたのは、三田のフレンチレストラン『コート・ドール』です。シェフは斉須政雄さん。本当に料理を愛している、本物の職人魂を持った方です。

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2007.12.4
貝桶
 以前、日本刺繍を習っていたときに、名古屋帯に貝桶の刺繍をしたことがありました。当時は、『貝桶???』という感じで、『それって何?』と、無知丸出しだったわけですが、その後調べてみたら『貝合わせ』(『合貝』、『貝覆い』とも言うらしい。)という雅なお遊びのお道具入れだということが分かりました。
 貝合わせは、蛤など二枚貝の『対になる貝殻としかぴったり合わせることができない』という特性を利用して、裏返した貝殻のペアを当てるというものです。トランプの神経衰弱のような感じですね。江戸時代には貝の内側に源氏物語なんかの絵を描いて、360組もの貝殻を合わせていったそうです。
 面白いのは、貝桶は公家や大名の婚礼調度の筆頭であったということ。なんでまたこんなものが・・・と、思ってしまいますが、対であった貝殻としか合わない・・つまり、貞節の象徴とされていたのです。すごいこじつけの様ですが、縁起担ぎには余念のない日本人らしい話しでもあります。
 この貝桶、1対(2つ)あるものですが、私が刺したのはそのうちのひとつ。その時の図案は、貝桶には菊と桐、台は豪華な七宝といういかにもおめでたい感じでした。実際、帯の刺繍ですから、大きさはお太鼓にはまるくらいのものです。それまでもちろん、貝桶は実際には見たことがありませんでした。
 それが、『大徳川展』にあったんですよね。(『大徳川展』は東京国立博物館で、12月2日までやっていた展覧会です。)輿入れの際の調度として貝桶が展示されていて、初めて本物の貝桶を目にしました。正直な感想としては、『でかい!』。ほんとに、大きかったんです。高さが50cmくらい。ちょっと大きめのバケツくらいの大きさはありました。それまで、自分が刺繍した貝桶の大きさが頭にあったので、こんなに大きいとは・・と度肝を抜かれましたが、360組も貝殻入れるんですから、このくらいの大きさがないと入らないですよね。
 徳川家にお輿入れというだけあって、所々に葵の御紋が・・。ドラマじゃない、本物の大奥に入るときに持っていった品です。その後の彼女の運命がどうなったのかは知りませんが、あのドラマから想像すると、貝桶や他の婚礼調度の華やかさと煌びやかさが、逆に切なく感じられてしまいました。

 写真は現在わが家で大ブレーク中の、Q−SKYとヘリ。チョロQの空飛ぶ版として出ていますが、結構面白いです。操縦にちょっとコツがいりますが、練習するとどんどん上手くなっていい飛行ができるようになるんですよね。貝合わせで遊んでいた時代とはずいぶん遊びの形も変わったものです。

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