cafe time sucre

カフェ・タイム・シュクレは、シュクレの杉浦今日子が、日々の出来事や刺繍のこと、
フランスのこと、もの作りのことなどをつらつらと書き綴る日記です。
コーヒーやお茶を片手に、ひと休みという時間のお供にどうぞ。


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2006.12.27
歓喜の歌
先日、『第九』を聴きに行ってきました。『第九』と言えば、ベートーヴェン。そして、年末に聴く音楽・・というのは日本人の常識・・となっていますよね。(もちろん、年末・第九は日本の常識で海外では違うそうです)
色々なホールで演奏されているようですが、私はN響のを聴いてきました。
実は『生・第九』は初めてでした。演奏はさすが、そつが無い感じ。テンポは早めで、ためがなかったのがちょっと残念だった・・・と個人的には感じました。
しかし、約70分に及ぶ長丁場。音楽のみに集中・・・っていうのは凡人にはちょっとできない技ですね。そうなると、舞台の上のあれこれが気になってくるというものです。オーケストラの編成は曲によって違ってきますが、第九で注目はピッコロ、トロンボーンなど、極端に出番の少ない楽器の方々でしょう。ピッコロは第4楽章のみ、トロンボーンは第2・第4楽章のみの出番ですが、オーケストラの登場からず〜っと椅子に座っています。第1楽章から第3楽章まで、それなりに『盛り上がり』を見せる部分があるわけで、オーケストラが一丸となって盛り上がっている最中、ピッコロさんはひとりぽつねんとただ座っているわけです。(トロンボーンは3人なので仲間がいますが、ピッコロさんはひとりぼっち。当然さんづけにしたくなります。)
第2楽章と第3楽章の間に、歌のソロの方々と打楽器のみなさんが入ってくるのですが、その時にちらっと音あわせの様なことをして、ピッコロさんもそこでちょっと吹いてみたものの、第3楽章も出番なし。そして、とうとう第4楽章。ここでピッコロさんは短いけれど素晴らしい見せ場(聴かせ場??)があり、はじめからずっとピッコロさんを気にしていた私を安心させてくれたのでした。
・・・とは言っても、第4楽章が始まって、ドイツ人のバリトンがソロを歌い始めたころ、『ああ、この人(ベートーヴェン)は耳が聞こえなくてこの曲をつくったのだ・・』と思ったらどわ〜っと涙が溢れてきてしまって、どうにもこうにも止まらなくなっていました。これほどの素晴らしい音の響きを、彼は頭の中ではっきりと聴いていたのだ・・と。『歓喜の歌』は人間として生まれてきた、生きる喜びのようなものを感じます。何かを失っても、絶望することはないのだ・・・と、この曲で感じることができます。

写真はフランス・アンジェのサン・モーリス大聖堂。荘厳な教会です。こんなところで歓喜の歌を聴いたら、すごいでしょうね。ちなみに、うちの旦那さんは第九の第四楽章を全部くち演奏できます(別名、くちオーケストラ)。歌も楽器の部分も全部です。これも結構スゴイです。ちなみに、ベートーヴェン・交響曲第五番、運命もできるそうです。

2006.12.21
お菓子づくり
先日、ティー・パーティーのために、ケーキを焼いてみようかな・・・なんてことを思い立ちました。
実は結婚以来オーブンを使ってケーキを焼いたことなんて1度もありません。“無謀か??”とも思ったのですが、まあ、美味くできなかったら出さなければいいし・・ということで、とりあえずチャレンジしてみることにしました。
まず、レシピがないので、ネットで検索。そうしましたら、出るわ出るわ、ものすごい数のレシピがわんさかあって、一体どれを作ったらいいのやら・・。世の中の人々がこれだけ多くお菓子作りに情熱を注いでいるのか・・・と思ったら、お菓子ってやっぱりすごいと思わずにはいられません。
そういえば、友人もお菓子作りに異様に執着している人がいます。以前会ったときにマドレーヌを作ってきてくれたのだけれど、綺麗な箱に入っていてひとつひとつビニールの袋に入れてトリコロールのリボンが結んであります。それだけならまだしも、自分のネーム入りシールまで作って貼ってある・・という念の入れよう。そのネーム入りのシールの印刷が妙に綺麗なのも気になります。そこまでせんでも・・。
マドレーヌも、焦がしバターを上手くつくるのに苦労したとかで何度もリベンジして、やっと納得のいく一品が出来たとか。
彼女は今シフォンケーキにハマリ中で、夜な夜なシフォンケーキを焼いているそうです。こちらも卵をいくつもいくつも無駄にして、やっと納得のいくものが焼けるようになったらしい。今では目をつぶってでも焼けると豪語していました。
私はと言えば、誰でも簡単に作れて失敗しないチョコレートケーキのレシピを見つけて作ってみました。・・・しかし、素人というのは恐ろしいもので、失敗しないはずのものでも平気で失敗するのです。案の定失敗し、夜中に砂糖を買いに走り、リベンジ焼きしました。自分的には上出来、だったと思うのですけど・・。

写真はコラムの内容とは全く関係ありませんが、パリのチュイルリー公園にいたうみねこです。多分、パリではうみねこという名前ではないのでしょう。以前東北に行ったとき、海岸線に群をなしていたうみねこを思い出しました。あの時我々はうみねこパンを持っていて、うみねこに大人気でした。チュイルリーのうみねこもうみねこパンが好きでしょうか?それとももっとグルメなのか?

2006.12.15
『ヨハネの黙示録』のタピスリー
フランス・ロワール地方にあるアンジェ城。ここにこの規模のものでは世界最古・・と言われているタピスリーがあります。
お城の外観もいかにも古いですよ〜、城塞ですよ〜という中世ヨーロッパ的においがしている建物ですが、タピスリーのある部屋に入ると、照明が暗いこともあり壁一面にず〜ら〜っと掛けられたタピスリーに圧倒され、ゆっくりと頭の上から覆い被さってくるような空気に包まれます。とにかく部屋に入った瞬間、息をのむ・・という感じ。古いタピスリーは、ヨーロッパを旅していると見る機会があるものですが、これだけ大きく、これだけ沢山、そしてこれだけ長く圧倒的に見せられると、正直言葉を失います。強いて言うなら、『わぉ・・』って感じ。
『ヨハネの黙示録』は新約聖書巻末の書。聖書の中で唯一預言的なことが書かれているということと解釈が難解ということで、その文書の扱いをどうするべきか・・と、長い間議論されてきた・・という曰く付きの文書です。
『黙示録』と言われるだけあり、なかなかおどろおどろしいです。7つの頭を持つ龍、7つの頭を持ち10の角を持つ獣・・など、怪獣系の登場や、天使が出てくるかと思えば、バビロンの都が崩壊したりする・・・。その場面がひとつずつ丁寧に『つづれ織り』で表現されているのです。その表現力が素晴らしい。14世紀という時代に、これだけのデザイン力、表現力、織りの技術があったのかと思うと、頭が下がります。
しっかりと人の手で、長い時間をかけて織られたつづれ織りは、色こそ褪せてはいますが、約600年経った今もその姿を美しく作品として保っていました。


写真は黙示録のタピスリー。L字型の展示室の壁一面に、びっちりと掛かったタピスリーは圧巻です。・・しかしとにかく人がいない・・。静か〜な感じでした。ほぼ、私と友人の二人きりで、この素晴らしい空間を独占しました。フランス人の友人も知らなかったし。『アンジェに有名なタピスリーを見に行く』と言ったら『なにそれ?』と返されました・・・。あれれ?フラッシュなしの写真で、ぼけぼけですみません・・・。

2006.12.5
世界3大タピスリーのある街、アンジェ
世界3大タピスリー、ひとつはパリのクリュニー美術館にある『一角獣と貴婦人』、ふたつめはノルマンディー地方のバイユーにある『征服王ギョームのイングランド征服の物語』、そして3つめが今回行ったロワール地方アンジェという街にある『ヨハネの黙示録』のタピスリーです。(タピスリーはフランス語、英語だとタペストリーになります)
アンジェはパリ・モンパルナス駅からTGV(フランスの新幹線)で1時間半のところにあります。パリから十分日帰り可能な街。
『ヨハネの黙示録のタピスリーが見たい!!』ただそれだけの理由で、アンジェに行くことを決めたのですが、タピスリーが一体街のどこにあるのか、駅から歩いて行けるのかなどは全く情報なしでした。まあ、行けばとにかく何とかなるに違いない・・ということで、とりあえずアンジェ駅に降り立ちました。
TGVが停まる駅だけあって、さすがに駅はご立派。いつぞやに降り立った、八戸駅に似たような感じ。(新しくモダンな感じなんだけれど、どことなく閑散としている。そして天井が高くて広々している感じ。)街の地図を求めて、まず駅の案内所へ。ここで親切なおねえさんに地図をもらい、タピスリーのあるアンジェ城への行き方をきくと、歩いて10分くらいで行けるということ。小雨が降りそうな天気の中、歩いてアンジェ城に向かいました。
駅からお城に向かう途中は、いかにもフランスの地方都市・・といった風情。アンジェは4つの河が合流するメーヌ川沿いにある街で、ローマ以前から都市が形成されていたそうです。豊かな水は都市建設の源、なんですね。15世紀には大学が作られ、学園都市として発展しました。いまでも教育は盛んで、商業都市としても知られている街です。さすがTGVの停まる都市・・ということで、フランス語のなまりもあまりないそうですよ。私にはそこのところの違いはさっぱり分かりませんでしたが・・・。
街には全体的に人があまりいなくて、宮古(岩手県の)のような感じ。宮古は人のいない閑散とした街を抜けると青く美しい海が突然に現れて、『おおおっ!!!』と思わず感嘆の声を上げてしまいましたが、アンジェで突然現れたのは、永い歴史の中で紛れもなくどっしりと街の中心に佇む城、アンジェ城でした。この城の中に、14世紀につくられた壮大なタピスリーが飾られているのです。・・タピスリーについてはまた次回に。


上の写真はアンジェ城の外観。お堀があり、17の監視塔がデーンと構えるいかにも『中世ヨーロッパの城っ!!』といった感じです。11世紀、アンジェ公によって建てられました。下の写真はアンジェ城の庭から、川の向こうの街の風景。灰色の屋根がどこまでも続いています。建物の高さがほぼ同じ・・というのは、いいですね。街に統一感があります。